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夢工房 『浩』~☆”

夢工房 『浩』~☆”

チルドレンズプラネット

「夏休みの宿題が思ったよりはかどったわ。」と、香は一緒に学校に行く

恵美子に言った。

「そうよねー、今年なんか長雨が多くてー、映画館にいったり。」

香が続けた、

「ビデオを借りたり。でも親が借りるビデオってなんか、趣味わるいのよねー。

こっちは探偵コナンを見たかったのに、未来少年コナンなんて―――。」

恵美子が挟んだ、

「未来少年コナンもあの宮崎駿が関係してたんですって―――。」

「ふ~ん。」あまり気が乗らない返事だった。

「オハヨ―!ハァハァ。」後ろからぱたぱた走ってきたのはのぞみだった。

「のんちゃん、おはよう!」

香と恵美子が言った。

「あのさぁ、今朝なんかおかしくない?」ハァハァしながらのぞみは言った。

「どこもおかしくないよ、髪型もいつもどおりだし―――。」

「ソ――じゃなくて、道路に車が走ってないよ。」

「たまたま、空いてるんじゃないの?」と、香。

「ねぇ、見て!」恵美子が叫んだ。

3人がいつも学校の帰りに寄るコンビニだった。

6年〇組の、男子が数名こそこそとコンビニから出て行くのが見えた。

「行って見よう。」

3人は駆け出した。

コンビニはいつものとおり明かりがついていて、BGMも流れていた。

ただ、レジのひとが誰もでてこないことを除いては。

教室は始業ベルがなっても、蜂をつついた騒ぎだ。

香と恵美子、のぞみはコンビニに入ったものの誰もいないのが気味悪く逃げるよう

に教室に入ってきた。

「ねぇ!ねぇ!、聞いてよ!」香は女子の誰かともなく訴えた。

「車は走ってないし、コンビニには誰もいないの!」

「職員室も誰もいなっかった。」他の女子。

「先生が寝坊かな?」

「いいよ、たまには。のんびりできてさ。」

「でも、おかしいわよね?」

クラスの中がざわめく。思い当たる子もいるようだ。

「♪~♪~」突然、着信メロディがなった。あまりのことに、マナーモードにして

いなかったんだろう。恵美子の携帯だった。

「あ、まずいんじゃない?学校に携帯持ってきちゃ?」

いじわるそうにクラス委員の佐々木さんが言う。

「ねぇ、うちの弟からなんだけど、幼稚園の先生が突然いなくなったって。」

「おいー、やっぱりなんかおかしいよ。誰か学校の外へ偵察に行ったほうがいいん

じゃないかな?」

男子がまた騒ぎ出した。

クラス委員の木ノ内君が制した。

「じゃぁ、言い出しっぺの松浦君、内藤さんのボディガードだな。行ってきな

よ。」

「いよー、ご両人いいぞー!ひゅうーひゅう!」クラス男子。

「まったく、男子はがきだから。」女子の一人がつぶやく。

「佐々木さん、僕は他のクラスへいって話をきいてくるから。」

「は、はい。」

「それまで、各自、自習だぞ!」

一瞬、静まり返ったクラスが3人が出て行くと、ぼそぼそと話し声が始まった。

クラス委員の木ノ内が戻ってきた。

「だれか、パソコンクラブの人いたっけ?」

「はーい。」何人か手を挙げた。

「伊藤のぞみさん、パソコン教室に行ってくれるかな?」

「なんで?」

「他のクラスでTVとか、つけてるんだけど砂嵐になってるんだ。」

クラスの中がざわめいた。

「ねー、これってやばいんじゃない?」女子の一人。

「あのさー、今日の給食はどーなんのー?」太った男子。

「どーいうことなの?説明してよー。」と、背の大きめな女子。腕力もつよそー。

木ノ内はこほんとしてから、おもむろにはじめた。

「原因はわからないが、この世から大人が、正確には中学生以上の大人がいなくな

ったんだ。」

「えー!?」

クラスがいっせいに悲鳴にちかい怒号を発した。

「木ノ内君、家にまだ2歳の弟がいるの!いってきていいかな?」

「このクラスで弟、妹がいる人はいったん家に戻って――――。」

「給食はどーすんだよ!」

「給食係りは厨房に行って!」

「低学年の人はどーするの?」

「保健係りの人、行って。」

「体育係りの人、集まって。」

体格のいい男子1人、女子1人さっきの子だ。

「職員室に行って。」

その言葉に否定的に反応する二人だったが、今はそんな状況下ではなかった。

「あとの人はどーするの?」

女子のクラス委員の佐々木が言った。

「とりあえず、これからどーするか、みんなで考えないといけないんだ。」

あくまでも木ノ内は冷静だった。

内藤恵美子は松浦ひとしと小学校から弟の通っている幼稚園に向っている。

学校から富士山のほうへ向って歩く、通りの家々は普段と変わらない佇まいだ。

「でも、なんで。車が通ってないんだろう?」ひとしが言った。

「周りの工場とか家とか、人がいないみたいに静かよね。」と、恵美子。

幼稚園に近づくと園児の泣き声で分かった、やはり先生がいないんだ。

なんで急にいなくなったのか考える間もなく、2人は園舎のなかへ走りこんだ。


伊藤のぞみはパソコン教室に入ると、何台かあるうちの一台の前に座り立ち上げ

た。

「まだ、電気はあるんだー。」

「うぉーっす。」2組のクラスの鈴木だった。

「伊藤さん、どーなの?木ノ内君のこと?」

「そんなの今関係ないでしょ!」

「おっかなー、僕はこっちにするよ。」

2人でカチカチやり始めている。


永沢良太は、近所の中華料理屋の息子だ。

高学年各クラスから集まった給食当番に的確に指示をだして準備を整える。

この学校はちなみに全校生徒800人ちょっと。

各学年3クラスの小学校。F市とF宮市の境にある田んぼが似合う学校だ。

授業の中で、田植えや稲刈りがあったりする。


体育係りの川口賢と石川かずみだ。

職員室には高学年各クラスから体育係りが集まっていた。

1組のクラス委員が言った。

「とにかく、情報がほしいんだ。幸い、教頭先生の車とキーがある。誰か運転して

調べてきてほしいんだ。他校の様子も見たいしね。」

「わかった、自分が行くよ。」3組の川口が言った。

「あと、3名誰かいるかな?」

「私がいくよ。」石川だった。

「ありがとう、じゃあと2名は2組が行ってくれるかな?」

言い終えると、1組のクラス委員は川口に携帯を渡し、

「使い方わかるよね?」

「私が使えるから!」と、石川。

「うん、学校の電話はいまのところ繋がってる。なにかあったら連絡してくれる

かな?」

「わかった。」4人は教頭の車に向った。

4ドアのちょっと高級車である。

「川口君運転できるんだぁー。」と石川。

「いやぁ、PからDにすれば発進だろ?それくらいわかるさ。」

「ふ~ん、なんでもいいけど。事故だけはごめんだからね。」

4人は車に乗り込んで広い通りを目指した。

松浦ひとしは、ようやく泣き止んだ園児たちに取り囲まれていた。

「内藤さんどうして携帯もってるの?しかも弟まで?」

「母子家庭だからおかあさんが迎えにこれない時はたいがい・・・。」

「内藤さん、この子たち小学校つれてってあげようか?」

「そうよね。ここにいても誰も迎えにこないかも知れないし・・・。」

「なんかさ、学校にもっていける遊具もたせて・・・。」

「その前にこの子たちにお弁当食べさせてからね。」

各自手を洗わせてから室内プレイルームに集める。

「おねーさん、お弁当の歌うたってねー。」

「内藤さん、うたってあげなよ。」と、ひとし。

お弁当を食べさせ終えると、2人は園児たちを学校まで引率する。

道いっぱいに広がって、おおぜいで歩くのはこんな時くらいしかないんだろうな、

恵美子は思った。

道路わきの草や家の庭の花は、普段とまったく変わっていないのに、急に大人がい

なくなってしまったなんて。

「松浦くん?」

「なに?」

「他のまちでも同じなのかな?」

「よくわかんないや、誰かが原因を探してくれると思うけどなー。」

「のうてんきだね。」

「っていうかさー、また急にひょっこり出てくるんじゃないかなー?」

「もし、そーじゃなかったら?」

「そんときはそんときさ。」

恵美子は案外大人たちがいなくても、自分たちだけでやっていけるのかなと、思い

始めていた。

ときより、園児たちに先生の行方を聞かれるがみんな大事な会議があってとごまか

すしかなかった。


「キャーッ!」「ワーッ!」

パソコン教室にいる皆が同時に発した。

端末をあけて暫くしたら、すべての画面に女の人が出た。

詳しく言うと、CGの画像だ。

3Dで画像もきれいだが、女の人も美人だ。

CGイラストのゲームの1画面かと鈴木雄太は思った。

ただ一つのことを除いては。

「びっくり、させてごめんなさい。」

落ちついた、威厳のある、それでいてなぜか懐かしい声だった。

「他のクラスのTVもつけてもらってください。」

おちついた、きれいなBGMがながれている。

給食室の厨房もほとんど出来たので、手をやすめた。

みんなの準備ができる間もまるでこちらを見据えるように、ただまなざしは

やさしかった。

「さぁ、みなさん、準備ができたようね。」

各クラスのTVの画面も同じ画像だった。

「いまから私が言う事は、とても大切なことです。

低学年の児童や幼稚園のお友達は、たいくつになったら自由にしていいわよ。」

誰も、そこを動かなかった。

みんな、何かがはじまると直感したからだ。

「まず、大人が今いなくなったけど、安心して。それに代わるひとたちがいるか

ら。」

ざわめいた。

「あのひとは一体誰なんだろう?」

「大人がいなくなったわけ、おしえてくるのかな?」

「大人はウィルスでみんな死んじゃったんだ。」

「でも、死体がないじゃないか!」

「UFOにみんなさらわれたんじゃない?」

「きっと、これは夢よ!悪夢だわ!」

「シーッ!!静かに!」

佐々木照子はその人の言う事を一言もらさず聞きたかった。

なにか、とてつもなくすごい事が起きていると思ったからだ。

一番近くの小学校についた石川たち4人も、その学校でこのハプニングにあ

った。

「川口君、うちの学校にTELいれる?」声がこきざみに震える石川だった。

「いや、うちの学校も同じだよ。」

「なんで、そんな事がわかるの?」

「いや、直感だよ。」

「ねぇ、」

「しっ!」

TVの女性は話を続けていた。

過去、地球上の人類は何回も絶滅しかけては、生き残ってきた事。

大きな生物は地球があえて惑星にぶつかるということでその進化をとめてき

た事。

あまりにも地球本体をいじめてきた今の人類に、地球自体が神経症になって

しまったこと。

銀河系のNGOグループが何組も地球を指導に来たが

成果が思わしくなかった事。

以前のままの状態でいった先の時代の話。

どうやら、この女の人は未来からきたみたいだ。

「ちょっと、お話が長くなったけど、こうなったのは地球を守るために

A・I(人工知能)と地球と話し合って決めた事なの。

話合うって、つまり波長をあわせるってことだけどネ。

いままでは生物の進化のためにその種の優勢な部分だけ残したの。

そのために地軸の移動やマグマの温度変化で地球上を

冷やしたり、熱くしたりしたの。

でもね、今度は地球自体があぶないの。壊れるかも。

そうすると、太陽系、銀河系にも影響してしまうでしょ。

だから、地球は人類の子供たちに未来を託したわけ。

これは、太陽系、銀河系の総意でもあるの。

急にいろんな事をいわれてパニックかもしれないわね。」

そのTVの女性は、一人一人の子供たちをやさしい目で見ている。

「安心して、各小学校校区に何名か子供帰りさせた大人がいるわ。

その人たちは君たちにお米の作り方や、野菜のつくりかた、漁の仕方

など教えるわ。

学校の授業は午前中でおわり、各自の能力をいれてあるから

ひとりひとりの進歩に応じたカリキュラムがあるの。

午後からは体験学習・実習でグループ単位で行動ね。

当面、低学年の児童たちは好きな遊びをしていていいわ。

ただしグループ単位での遊びよ。

遊び方が分からない人たちは教えてあげますから

あとでこっそりきてくださいネ。

将来は透明ドームの開発、イオン発電や思念エネルギーで宇宙間

を飛び回る乗り物などを教えていくわ。

それとリーダーは暫定的に今のクラス委員が続けててくださいね、

たいへんかもしれないけどよろしくね。

そして最後に、みなさんに一個づつ端末を与えておくわね、これは

みなさんが日常で不便な時にすぐホストコンピュターに直結。

携帯電話とパソコンがくっついたようなものよ。」

「腕時計みたい。」

「あといろいろな機能があるわ。大切につかってね、今後なにかと

便利だから。

早速だけど5-6年のクラス委員は職員室に来てくださいね。」

職員室には、5―6年のクラス委員が集まっていた。

FAXで書類が流れてきている。

各クラスに割り振られていた書類には、自分たちが住んでいる近くの

住所がならんでいた。

大人がいなくなったから、当然赤ん坊はひとりっきりだ。

赤ん坊の救助と、ペットの状況確認の指示書だった。

各クラスに戻ってまず男女ペアで10数組が学校を出た。

後の20数名で各住宅のペットの確認作業だ、4人グループで行われる。

「かわいいからってペットは連れてきちゃいけないんだ。」

「学校で赤ちゃんを一括で面倒見るからしょうがないよ。」

「ナーバスになって噛まれたりしないかな?」

「だから、キーパーグローブをはめてるんじゃない?」

「襲ってきたらこいつでバーンって、やっつける?」

ぶーんとバットをふる男の子。

「だめよ、動物虐待だわ。」

「保健所の資料をもとに、ペットが十分えさが与えられているか

聞き取り調査ですって!?」

「普通はちゃんとあげてるよね?」

「そっかー、おれんちなんて、たまーに晩御飯カップラーメン食べといてなんて

おっかあがメモのこしてるぞ!」

「あんたは親のペットかい!」

「ねえ、この作業は今晩からもあるんだね、ペットの食事とかね。」

「でも、猫なんて家にいないのは?」

「用意しておくしかないよ。猫は家に住むっていうからね。」

佐々木照子と井上一雄は赤ちゃん救助隊のチームだ。

学校からそんなに遠くないところの家で赤ちゃんを救出、あやしながら学校まで

抱きかかえてくる。

照子が言った。

「どーしてこんな可愛い赤ちゃんを虐待とかしてしまうんだろう?」

「そりゃー、一日二日じゃ、いいだろうけど。毎日のことだよ。

たいがい母親もストレスたまると思うよ。

ちょっと泣いたと思ったらやれミルクだとか、おしめだとか、

抱っこだとか。夜泣きもそうだし、母親っていうもんは

たいへんな仕事だよ。

だけど、そう選択して子供を作ったんだから責任は果たさなきゃ。」

と、一雄。

「一緒になった旦那さんが理解があるひとならいいんだけど、

たまにはミルクをあげるとか、おしめを代えてくれるとか。」

「俺たち、何話してるんだ!」

「夫婦の会話みたいじゃん、」

「Hongya-!hongya-!」

「だっこのむきをかえてほしいよー!」

「え?!なんか、言った?井上君?」

「佐々木さんじゃ、ないの?」

「ぼくだよーぼく。」

どうやら腕時計から音声が出ている、赤ちゃんの言葉だった。

さっき、TVでCGの女の人が話をしたので体外のことには

驚かない2人。

「佐々木さん、だっこのむきをかえてあげれば?」

「あ、そーか、はいはい。」

「話しかけてみるかな?きみ、なまえはなんちゅうの?」

「まーくんでちゅ。」

「あ、通じた!」

「おにいちゃん、おねえちゃん、まーくんのママがいないんだけど。

しらない?」

「さぁ、ちょっとお買い物じゃないの?」

「それよりかさ、まーくん。いまからおにいちゃんちと学校へいって

遊ぶんだよ。よかっただろー。」

「わーい! うれちいでちゅ。」

一方、ペットの状況を確認に行ったチーム。

ある家にラブラドールの老犬がいた。

やはりしゃべった。

「おわかいの?今日は学校はないのかね?」

「えー!?端末が翻訳してるー!?」

「まぁ、ちょっと、ゆっくりしていかんかねー。」

「ちょうどいいや、おじさんの名前と年齢を知りたいんだ。

それと食事の時間と種類をね。」

「なまえはボスっていうんじゃ。オスで当年とって15歳。

食事はドッグフード一日2回朝晩と、あと一週間に一度骨付き肉1Kg。

あ、それと頼みがあるんじゃが聞いてもらえんじゃろか?」

「なに?」

「最近、家の人は皆忙しそうで、ちーとも散歩につれてってくれんのじゃ。

毎日とはいわんがたまにはつれてってくれんじゃろか?」

「わかったわ。特別記入欄に・・・。」

「いいよ、記入しなくても。多分ぼくらの仕事になるから。」

「ありがとう。

あんまり散歩しないと、よる年波で体が言う事をきかなくなって困る。

で時に何で○○小学生の君たちがこういうことを

しはじめたのかな? 課外授業かいのー?」

「実は――。」と

しゃべりかけたとき、端末から音声がなった。

昼食の準備ができたそうだ。

「ボス!じゃまた夕方くるねー!」

4人は学校へ戻る。

学校では給食係がちゃーんと料理をつくってくれてあった。

シチューだった。

「永沢君すごいじゃん!」

外からもどってきた人たちに言われると、

「みんなの協力のおかげだよ!

でも昨日の夜、給食のおばさんが野菜とか切って

冷蔵室に入れてくれてたから。」

「800人分だもんなー。」

と木ノ内君。

各クラスに配膳をすますと

普段の給食と同じ光景が始まった。

何事もなかったように。

おおかた日本全土、いや世界のこどもたちがこうして

暮らし始めるのだろうと、木ノ内君はじめ

皆思っていた。

夕食は高学年全員で手分けして作った。

コロッケとサラダ。

クラス単位でなく、各学年混合で

食事をとる。

にわかキャンプファイヤーが校庭であって、

子供会のジュニアリーダーを経験していたという

男子が場を盛り上げた。

そして、天文クラブによる星座教室が

屋上で開催されて一日が終わった。

寝袋を持ち込んで寝る教室の風景は、

林間学校のようだった。



そのころ学校のパソコンは。

その奥で―――。

銀河評議会のホストコンピュータールームへ。

そのまわりに何人かの白衣をきたひとたち。

「今回の治療は、地球の子供たちを残しておく療法だ。

まだ希望が持てると?」

「そうね、逆に子供を全員消してしまった時は、

大人たちは虚無感に襲われて、わたしたちの言葉も

届かなかったわ。」

「人々の間に疑心暗鬼。」

「一週間で地球は核の時代に入ってしまった。」

「ひとつの地球が消えたわけがそれね?」

「こんなのはどーかしら、次の治療ではいきなり

片方の性を消しちゃうの?」

「どーかなー、最終的にはロボットの惑星で―。」

「地球上の生命をぜーんぶ飛ばすと、

地球がかわいそうでなー。」

「そうねー。今回のクライアントは人類を我が子のように

見守っていたから。」

「親と子というのも相補性があるんじゃ。」

「かといって、これ以上人類にわがままを

させてもよくない。」

「例の地球本体を若返らせる方法はみつかったわけ?」

「危険がともなうんじゃよ。」

「やはりあれしかないわけね。」

「ブラックホール・・・?」

「いや特異点を補則できたんじゃ。」

「われわれの存在みたいなもんじゃないですか?」

「あるようでない、ないようであるなんて。」

「いやぁ、想いは実現するんじゃ。」

「じゃあ。」

「ビッグバンから?」

「そうじゃ。」

「多次元宇宙も消えてしまうわ!」

「そうじゃ。」

「長老!それじゃ元も子もないわ!

宇宙開闢からたどるなんて無謀よ!

問題はクライアントだけのことでしょ!

他の銀河評議会からクレームの嵐よ!

その時点でまだいくつもパラレルワールドがあるんだから、

もしひとつの地球が終わっても、スペアがあるじゃない!

今回のケースは、この次元の宇宙の

地球と人類に選択させればいいわ!」

「それにいままでの治療で次元間のトンネル効果も

じわじわ利いてきてると思いますが。」

「長老!」

「長老!」

「うむ、わかった。クライアントに伝えておこう。」



朝になった。

「香!かおるー!起きなさい!」

「恵美子。おはよう、朝よ。」

それぞれの家庭でそれぞれの朝が始まった。

「夏休みの宿題が思ったよりはかどったわ。」と、香は一緒に学校に行く

恵美子に言った。

「そうよねー、今年なんか長雨が多くてー、映画館にいったり。」

香が続けた、

「ビデオを借りたり。でも親が借りるビデオってなんか、趣味わるいのよねー。

こっちは探偵コナンを見たかったのに、未来少年コナンなんて―――。」

恵美子が挟んだ、

「未来少年コナンもあの宮崎駿が関係してたんですって―――。」

「ふ~ん。」あまり気が乗らない返事だった。

「オハヨ―!ハァハァ。」後ろからぱたぱた走ってきたのはのぞみだった。

「のんちゃん、おはよう!」

香と恵美子が言った。

「あのさぁ、今朝なんかおかしくない?」ハァハァしながらのぞみは言った。

「あ!へん!その髪型!」

「もーやだー!最悪―!」

「なんでなんでー?」

おしまい



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